危機と人類まとめ
こんにちは、今日はジャレド・ダイアモンド先生が書かれた危機と人類という本を紹介します。
この本は国家の危機にどう対処すればよいかを書いた本で、なんとなく堅苦しい感じがするのですが、結論としては個人の生き方に非常に役に立ちます。
何か人生でうまくいかないと思った時にどう対処すればよいかのヒントを与えてくれる本です。
今回の動画では、まずこの本の概要を説明し、その中でAsatoが大事だと思ったことを日常生活に生かす方法とともに説明します。
まず著者のダイアモンド先生は一言で言うとすごい人で、ハーバード大学を首席で卒業した後、ケンブリッジ大学で生理学の学位をとります。
そのあと人類について興味を持って、いろいろ研究されあの「銃・病原菌・鉄」を書かれました。この本は知っている人も多いのではないでしょうか。
現在は80歳を超えていますが、現役で大学生に地理学を教えるかたわら、週に何回かはトレーニングしたり、イタリア語のレッスンを受けたりしてさらにはクラシック音楽の室内楽団でピアノを担当したりと、
もうすごすぎてよくわからない人です。
あまりに博識なので、ジャレド・ダイアモンドという名前は多くの専門家を集めたグループが使っているペンネームなのではないかと言われているほどです。
そんなダイアモンド先生がこの本で主張していることは個人の危機と国家の危機は似ているところがあり、個人の危機を脱出するアプローチを活かせば、国家の危機を乗り越えることができるのではないかということです。
まず、個人の危機の例としては事業を起こしたが失敗して借金を背負ってしまったとか、失恋してしまったとかがあるかと思います。
ここでいう危機とは現在何かしら問題を抱えている状態で、このままいけば状況が悪化するであろう状態のことです。
一方で国家の危機は例えば、江戸時代末期の黒船襲来などがあります。黒船が来て、鎖国していた江戸幕府が開国を迫られます。
それまでの安定した政治が脅かされている状態で、まさに危機です。
そして、ダイアモンド先生が言うには、これらの危機に対処する方法は個人と国家で類似点があるということです。
まず、個人の危機に関してですが、こちらはすでに心理療法の専門家たちが個人の危機を脱するための12の方法を見つけてくれています。
それがこちら。
1、危機に陥っていると認めること
2、危機を起こすのは自分であるという責任
3、囲いを作り、解決に必要な個人的な問題を明確にすること
4、他の人々のグループからの物心両面での支援
5、他の人々を問題解決の手本にすること
6、自我の強さ
7、公正な自己評価
8、過去の危機体験
9、忍耐力
10、性格の柔軟性
11、個人の基本的価値観
12、個人的な制約がないこと
一方でこの本で扱う、国家が危機を脱するための方法がこちら
1、自国が危機にあるという世論の合意
2、行動を起こすことへの国家としての責任の需要
3、囲いを作り、解決が必要な国家的な問題を明確にすること
4、他国からの物質的・経済的な支援
5、他の国々を問題解決の手本にすること
6、ナショナルアイデンティティ
7、公正な自国評価
8、国家的危機を経験した歴史
9、国家的失敗への対処
10、状況に応じた国としての柔軟性
11、国家の基本的価値観
12、地政学的制約がないこと
これらを比べると、個人の危機に対する対処方法と、国家の危機に対する対処方法がほぼ同じであることがわかります。
これまであった国家の危機を見ると、うまく危機を乗り越えた国家はこの対処方法を実践しているとこの本には書いてあります。
また、過去にうまく危機に対処した国に比べて、現在問題を抱えている国はこの対処方法を実践していないことを指摘しています。この動画ではこの中で公正な自己評価という点に焦点を当ててお話ししていきます。
この本には7つの国が例として出てきますが、過去に危機を乗り越えた一方で、現在の危機に対処できていない国として本に登場する国が、日本です。
過去の日本の危機は黒船がやってきた時です。このとき日本はどうやって危機を乗り越えたのかを見ていきます。
江戸時代の日本は鎖国をして本当に安定した生活を送っていました。
そこに突如やってきたのがペリーの黒船です。彼らの目的は日本を開国させることでした。
このペリーが来航したことがこの時期の日本にとっての大きな危機でした。
それまで非常に安定していた鎖国という制度をやめ、積極的に外国と関わりを持つことは日本にとって多くの不安要素がありました。
この頃から外国との衝突も度々起こり、西洋の武器が強いことを日本人は身にしみて感じるようになっていきました。
このままでは日本が危ない、そんな空気が日本に流れている中、明治時代に入っていくのです。
しかし、日本はこの危機を見事に乗り越えます。
まず、日本は外国の方が日本よりも優れている点があることを認め、多くのことを外国から取り入れます。
憲法はドイツから民放はフランスから、そして教育はアメリカからというように世界で最も優れているものを世界各国から取り入れていきます。
しかし、日本はその中でも多くの伝統を残しています。
日本語がそうです。教育はアメリカから取り入れましたが日本語は残りました。
他にも天皇崇拝の心も同様に残ったと本書には書かれています。
日本はどの国にも劣らず優れているというアイデンティティを捨てることはありませんでした。
そのアイデンティティがあったからこそ、政策で意見が割れることがあっても、日本をもっと良くしたいという思いは共通でした。
その思いがあったからこそ、明治維新と呼ばれる改革を成功させることができたのです。
この例から学べること、それは明治日本が国家の危機を脱する方法を踏襲していたということです。
まず、ペリーが来航した際に日本はこのままでは危ない、日本は他国よりも劣っているという公正な自国評価がありました。
その自己評価があったからこそ、他国の良いところを手本にすることができたのです。
次に現代日本を見ていきます。
こちらはまだまだ課題が解決できていない状態だとダイアモンド先生は言っています。
その問題の一つは少子高齢化です。日本では何年も議論になっていますよね。
日本の人口は2060年までには現在の人口から4000万人減少して8000万人になると言われています。
日本がこの問題を大きく扱うのは労働の原動力である人口が増えなければ、人の減った日本は貧しくなり、世界での影響力が小さくなると考えているからです。
しかしダイアモンド先生は、人が減れば日本は貧しくなるどころか豊かになるという意見を持っています。
理由は必要とされる国内外の資源が減るからです。
実際に日本よりも人口が少なくてもそれでいて富裕な国はいくつもあります。オーストラリア、シンガポール、スウェーデン、シンガポールなどです。
このように少子高齢化が日本にとって恩恵をもたらす面を考えず、一方的に解決すべき課題と位置付けることは、国家が危機を脱するために必要なことのリストに入っている公正な自国評価がでできていないとダイアモンド先生は言っています。
人口が減ることを悪と捉えているのです。
もちろん反論もあると思いますが、これがダイアモンド先生の意見です。
では最後にこれらの例から個人が日常に活かせることについてAsatoが思うことです。
それは現実を公正に見るということでが非常に大事だということです。
明治の日本ではこの現実を見るということができていました。
外国の技術や制度を見て、日本が劣っていることをしっかりと自覚した明治政府は外国の良いものを積極的に取り入れていきました。
一方で、現代の日本は少子高齢化が悪ということを信じており、少子高齢化が日本にとって恩恵をもたらすのではないかということを考えません。
これは、少子高齢化が良いと言っている訳ではなく多くの人が知らず知らずのうちに少子高齢化は悪いことなのではないかと思っているということです。
Asato自身もなぜ、少子高齢化が悪いかということを真剣に考えたことはなかったと今思っています。
他にも例えば風力発電について、鳥が風力発電器にぶつかって死ぬということが世界各地で起こっているようです。
だから、風力発電をやめるべきだと考える人もいます。
しかし、風力発電器で死ぬ鳥よりも、猫に殺される鳥の方が圧倒的に多いのです。
この現実を知らずに風力発電をやめるべきという議論をする人がいるとダイアモンド先生は言っています。
他にも日本は沈没しているという人がいますが、世界的に見れば日本は超大国で、多くの指標で世界トップクラスであるとダイアモンド先生は言っています。
多くの人はメディアで見た情報をそのまま鵜呑みにして、それに基づいて行動します。
日本が沈没しているというのはある面では正しいのかもしれません。しかし、多くの面では例えば技術・経済などではいまだに日本は優れているのです。中国にGDPを抜かれたから日本は地位を脅かされているなど、一部の情報に振り回されることなく多面的に情報を見て、しっかりと現実を捉えましょう。
現実を見て、自分の頭で考えてから行動すると結果は違うものになるかもしれません。
現実をしっかりとみるということは実はなかなかできていないし、国家だけではなく個人としても生きる上で重要なことだと感じました。
では、動画をまとめます。
まず、個人の危機と国家の危機への対処方法は似ているということ。
明治時代の日本は自分たちへの正当な評価をできたために危機を乗り越えることができたが、現代の日本は自分たちへの公正な評価をできていない面があるということ。
個人としても現実を見て、公正な評価をすることがとても大事になのではないかということ。
非常に面白い観点で国家について論じた本です。
日本だけでなく、アメリカやフィンランドなど、様々な国の危機について書かれた本です。気になった方はぜひ読んでみてください。
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